乗り物酔いの予防・緩和について
 (2006.5.7)
 

〜 大型連休中には乗り物酔いのお薬がよく売れるものです。
     このゴールデンウィーク中にも、やはり、よくお客様からのご質問をお受けしました。
                                そこで今回は、乗り物酔いのお薬のお話です 〜




私が「乗り物酔いの薬」に出会ったのは小学校の何年生の時だったでしょうか・・・。

とにかく私は、車酔いしやすい子供でした。

毎年、「社会見学」といって学校からバスに乗っていろいろな場所に見学に出かける行事があったのですが、
いつもあの揺れのせいで最初から気持ちが悪かった・・・
そして "いざという時" のために私はバスの中で、いつも
「ビニール袋」が手放せなかった・・・
そんな思い出があります。

そんな私に、いつの日か親が「酔い止めの薬」を飲ませてくれて、その時は全く車酔いしませんでした。
幼な心に、「薬ってすごいなぁ。」と思いました。
もちろん、薬の効き目もあったでしょうが、
今思えば、「これを飲んだから酔わないはず。もう大丈夫。」という
プラセボ効果も大きかったような気がします。

そんな頃から20年以上経ち、私は今、薬局で働いています。

私の勤める店にも、あの頃と同じような「乗り物酔いの薬」が幾種類も並んでいます。

成分・剤形・効き方等、いろいろ特徴がありますので、現在店頭にある商品の主要なものについて、表にまとめてみました。

発売元 特徴・パッケージの記載 抗ヒスタミン薬 鎮吐薬 抗めまい薬
(鎮うん薬)
副交感神経
遮断薬
中枢神経興奮薬 補助薬
トラベルミン エーザイ 小さな錠剤で飲みやすい サリチル酸
ジフェンヒドラミン
ジプロフィリン
トラベルミンファミリー 水なしでフワッと溶ける速崩錠
酔ってからでも効く
苦くないオレンジ風味
塩酸メクリジン 臭化水素酸
スコポラミン
トラベルミンR 眠気の比較的少ない成分配合
酔ってからでも効く
小さな錠剤で飲みやすい
塩酸
ジフェニドール
臭化水素酸
スコポラミン
無水カフェイン 塩酸ピリドキシン
(ビタミンB6)
パンシロントラベルNOW ロート製薬 水のいらないチュアブル錠 塩酸メクリジン 臭化水素酸
スコポラミン
塩酸ピリドキシン
(ビタミンB6)
アネロン
「ニスキャップ」
エスエス製薬 持続性製剤
1日1回
10〜12時間持続
マレイン酸
クロルフェニラミン
アミノ安息香酸エチル 臭化水素酸
スコポラミン
無水カフェイン 塩酸ピリドキシン
(ビタミンB6)
タケダ
乗り物酔い止め
武田薬品 塩酸メクリジン 臭化水素酸
スコポラミン
センパアS 大正製薬 酔ってからでも 塩酸メクリジン
センパアQT 酔ってからでも効く
水なしでスッと溶ける
d-マレイン酸
クロルフェニラミン
臭化水素酸
スコポラミン
センパア内服液 塩酸メクリジン 臭化水素酸
スコポラミン
テオフィリン
ウエルシア
乗り物酔い止めQD錠
第一製薬 水なしで飲める
口の中でスーッと溶ける
メントール味
1日1回でOKの持続性製剤
塩酸メクリジン 臭化水素酸
スコポラミン
ウエルシア
乗り物酔い止め液
ホーユー 臭化水素酸
スコポラミン
無水カフェイン


◎ パッケージに記載されている言葉がうまく商品の特徴を表現しているので、
  接客時にはそれぞれの記載内容をお示ししてご説明するとわかりやすいでしょう。

◎ 基本的に、酔い止めの薬は 

 「車に乗る30分くらい前に飲んでおき、車に乗った時には酔いにくい状態にしておく
 というのが本来の用法です。
  例えば「トラベルミン」の用法には次のように記載されています。
 
「乗りもの酔いの予防には、乗りものに乗る30分前に、水またはお湯で服用してください。」
 ・・・とは言え、店頭に立っていれば
 「もう酔ってしまっているんだけど今すぐ酔いを抑える薬はありませんか?」と求められることもあるかもしれません。
 そのような時には例えば「トラベルミンR」や「トラベルミンファミリー」のパッケージをお示しして
 「これならここに書いてあるように、
酔ってからでも効きますよ。」と納得して買って頂くことも必要かと思います。
 異論のある方もいらっしゃるかもしれませんが、

 お客様に対し、いかにうまくプラセボ効果を発揮させられるかというのも、薬剤師の技量のひとつだと思います。

  ちなみに、「トラベルミンR」と「トラベルミンファミリー」は、
 成分の
臭化水素酸スコポラミン嘔吐中枢に直接働きかけて吐き気を抑えるため、抗ヒスタミン作用が主体の「トラベルミン」と比較すると、
 酔って気持ちが悪くなってからでも効きやすいとのことです。
  ただし、実際は、上記の薬以外でも、すべての酔い止め薬が「酔ってからでも効く」はずです。
  すべての酔い止め薬に書かれている効能・効果 〜乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び
緩和〜 がそれを示しています。

◎ 水なしで飲める薬を求められることも時々あります。
  そんなお客様には
  液剤のタイプ、あるいは、
  チュアブルである「トラベルミンファミリー」「センパアQT」「ウエルシア乗り物酔い止めQD錠」などをおすすめしましょう。

◎ 眠気に関してですが、
トラベルミンR」の主要成分ジフェニドールは抗めまい薬に分類され、眠気はほとんどありません。
  これに対し、「トラベルミンファミリー」や「トラベルNOW」などに入っているメクリジンやジフェンヒドラミンは
  抗ヒスタミン薬と言って、眠くなる副作用のある成分ですので、眠気が出やすいでしょう。
  ですから「眠くなっては困る! 」という方には「トラベルミンR」がおすすめというわけですが、
  まぁ、眠くなっても構わないという方もいらっしゃいますので、その辺はうまくお客様の要望をお聞きして、お薬をチョイスしましょう。

◎ 「アネロンニスキャップ」と「ウエルシア乗り物酔い止めQD錠」は
1日1回の服用で、持続性があり、
  長時間の酔い止め効果を期待する場合によい
でしょう。

◎ 時々「ビタミンB6」を配合した商品がありますが、これは、補助的に吐き気、めまいに効果があるようです。





さて、車酔いを防ぐには、このように薬に頼る以外にも、
お客様にアドバイスできるポイントがいつくかあります。




● 食後すぐに車に乗るのは避けましょう。特に消化の悪いものは控えておくのがよいでしょう。
● トイレは済ませておきましょう。
● 充分な睡眠をとっておきましょう。寝不足は禁物です。ただし、もし車内で寝てしまうことができるなら、その方が酔わなくて済むでしょう。
● 外を眺めるなら、遠くを眺めましょう。近くを見ていると酔いやすいようです。
● 
"酔い止めのツボ "なんてのもあります。
  手のひらを上に向けて、手首の中央から腕に向かって3センチぐらいのところにある
「内関」(ないかん)というツボを押すとよいそうです。
  
  図の載っているページをリンクさせて頂きました↓ 

    http://www.kitanet.ne.jp/~akutsu-s/health/tobo_norimonoyoi.htm
(outer link)

  ちなみに、このツボを刺激して酔い止め効果を発揮するための商品(リストバンドやパルス器)も、何種類か販売されています。

● それでも気分が悪くなってしまったら、早めに車を降り、深呼吸して気分一新しましょう。


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それでは、みなさんが快適な乗り物の旅を楽しむことができるよう、祈っております ~\(^o^)

他に、「私はこんなやり方で乗り物酔いを克服した!」という体験談がおありの方は、ゼヒゼヒ教えて下さいませ m(- -)m


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junkuribayashi@hotmail.com

                                        


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